今考えても「マッピー」ってゲームはすごかったと本当に思う。実にいろんな意味でね。

マッピーのBGMの素晴らしさは以前も書いたけど、何より設定が面白い。
そもそも「マッピー」という名前自体、隠語の「マッポ(=警察官)」から来ており、設定としてはあくまで「警察ネズミ」なんですよ。んでニャームコと手下のミューキーズが「泥棒ネコ」ということになる。
これね、普通に考えたら「警察ネズミが泥棒ネコを次々捕まえる(逮捕する)」ゲームシステムにしなきゃおかしい。ゲームに限らず「捕まえようとする側=追いかける側」が警察、「捕まえられかけてる=逃げる側」が泥棒と相場が決まってる。「ルパン三世」だってそうでしょうが。

でも当時、いや実は当時だけじゃないんだけど、アクションゲームというのは基本的に「逃げる」ものであり、時たま反撃のチャンスがある(「パックマン」のパワーえさ、「ドンキーコング」のハンマーなど)って感じだった。
それがマッピーでは「主人公=プレイヤーキャラ=正義」「敵役=CPU=悪」という図式のまま「盗品と取り返す」という設定にすることで「パックマン」以来のドットイートゲームの要素を残してアクションゲームの基本を守っているのです。

ただ逆に言えば、です。
たしかにマッピーは画期的な設定で諸条件をクリアしてるんだけど、システムとしては過去の例に倣ってるわけで画期的でもなんでもない。
もちろん画期的でない=ダメではない。むしろ何で「そこ」を弄らなかったか、なんです。
アタシはね、人々が本能的に「面白い」と感じるのは、やっぱ「逃げる」ということなんじゃないかと。そして無事逃げ切れた時にすごい爽快感を得られるんじゃないかと。
これまたゲームに限らない。太古の昔、チャップリンやキートンが演じたサイレント喜劇映画も、主役である彼らがひたすら「逃げる」シーンが用意されていた。そして何よりそうしたシーンが映画の最大の見どころ、笑いどころになっていたのです。

これも逆に言えばになるのですが、加害者側の主人公にはどうしても感情移入しづらいし、たとえば「チャップリンの独裁者」で一番難しかったのは主人公が加害者側だったことだと思う。(もっともアタマの良いチャップリンはひとり二役にすることで解決している)
これは本当に「何故か」なのですが、ひたすら攻撃しまくる類いの作品は、映画はもちろんゲームも、面白くするのが難しい。仮に1980年代の低性能なマシンでも「相手の攻撃はなく、ひたすら撃ちまくるだけのシューティングゲーム」くらい作れそうなものだけど(「敵」にやられない代わりにタイムオーバー制にすればいい)、というかたぶん試作はしたんだろうけど、あんまり面白くなかったから止めた、という感じではないかと想像するのです。

結局は「爽快感とは何なのか」って話になるのですが、徹頭徹尾、自分(主人公)が攻撃側って爽快感を得るのが困難というか、進むにつれどんどん攻撃性、残虐性をエスカレートせざるを得ず、あるラインを超えるとそこから爽快感が不快感に変わる。
しかし自分(主人公)が追われる側なら、それがたいした攻撃じゃなくても攻撃に転じた時点で一気に爽快感を得られるし、さらに逃げ切った末にはまた爽快感を得られる。

いやもっと言えば、仮想の世界で「逃げる」こと自体、ものすごく気持ちの良いものじゃないか。当然リアル世界で誰かに追っかけ回されて逃げ回るなんてたまったもんじゃないけど(実際、逃亡犯が出頭するケースはほぼ「逃げ疲れ」)、何か、あくまで仮想の世界であればという前提さえあれば、とにかく逃げ回りたいみたいな欲望というか本能がありそうな気がする。
逃げて逃げて逃げまくって、んでほんの時たま反撃に転じて、また逃げて逃げて、最後には逃げ切りに成功する。これはチャップリン映画、ルパン三世などの鉄板パターンです。

そうした、本能的に気持ちいい、をゲームシステムに移し替えたパックマンはやはりすごい。前世代の「スペースインベーダー」の<避ける>を<逃げる>に、<常時攻撃可>から<特定のアイテムと取った時だけ攻撃出来る>というのはまったく本能に沿ったシステムです。
この「時たま攻撃出来る」というのもね、そりゃ逃げる方が本能的ではあるんだけど、あまりにも逃げてばっかりじゃストレスを感じさせる可能性があるわけで、その辺も実に上手い。

そのパックマンの延長線上にあるのがマッピーなわけですが、これを超えるのがかなり大変なのは<本能>基準で考えるなら自明の理です。
アタシが最近のゲームに興味がないのはそれも関係している。「スプラトゥーン」なんかはまた別の本能刺激要素が入ってるから「やってみたいな」と思うんだけど、他の、フィールドをウロウロして、敵がいたらこっちから積極的に絡みにいって攻撃するって、どうも本能的じゃないから惹かれない。

本当は映画だって小説だって全部一緒だけど、とくにゲームの場合は人間の本能的に気持ちいいか否かを考えないと話にならないですよ。それこそ「テトリス」なんか「隙間にピタッとハマるとそれだけで気持ちいい」という本能を利用したゲームでしょ。
つかそれを考えるのがゲームクリエイター最大の仕事でしょうが。



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