ベネズエラと試合をした時も、ドミニカとベネズエラの試合を見た時も、足りないことだらけ。パワーも、スピードもだけど、シンプルに勝負できる技術が足りないな、と。


これはWBCに初参加した坂本誠志郎の発言ですが、この発言は実に興味深い。というか「坂本さすがやな」と思ったというか。
これは野球に限らずスポーツ全般に言えるのですが、世界大会などになるとどうしても他国と比べてフィジカル面が劣ることばかりが強調されます。たしかにそれもそうなんだけど、ではフィジカルが優れていたら、というかフィジカルが凄ければ凄いほど凄い成績を上げられるのか、というとまったく別の話なんですよ。

日本で一番ホームランを打った選手は、となると誰でも答えられるレベルで、もちろん王貞治ということになるんだけど、じゃあ王貞治が「日本のプロ野球史上もっともパワーがあったのか」というとぜんぜん違う。
それは時代が違うからとかでもない。当時のチーム内でも単純な腕力は下の方だったらしいし、もっと言うなら「パワーで打ったホームラン」なんか一本もないんじゃないか。
そもそも一本足打法もけしてパワーをというか勢いをつけて打つ打法ではなく、タイミングの取り方が下手だった王貞治が「どうやったらタイミングが取れるようになるのか」の結果が一本足打法だったわけで。

つまりね、一本足打法を含めて、王貞治のホームランは「すべて技術で打った」と言っても過言ではない。
昨今はそうしたことがよく言われるようになってきた。昔は「打球を遠くに飛ばすことと、速い球を投げることは天性」と言われてきたけど、実はそうでもないというのがあきらかになってきた。
むしろ「ひと冬で球速が5キロ上がった」なんて話は珍しくないし、それこそアマチュア時代は「アヘ単」だった古田敦也がプロ入り後に30本塁打を打ったりもしてるわけで、むしろ球速や飛距離は「プロ入り後に伸ばすことが可能な要素」と言われ出しているのです。

というかね、パワーと「飛距離」ではなく「ホームランを打てる確率」はあまり関係ない。
ソフトバンクの柳田悠岐は入団時からすでにケタ外れのパワーだったけど、打球が上がらないことで有名だった。だからレギュラーに定着して以降もホームラン数が伸びなかった。
じゃあ何で柳田がホームランを打てるようになったか、それはもちろん「コンスタントにホームランを打つ技術を身につけた」からです。
そう考えれば、もちろん簡単ではないとは言え、やはり後付けでホームランバッターになることは可能なんですよ。

しかし一方、今まで「努力でなんとかなる」と思われていた守備やコンタクト能力、投手で言えばコントロールは「ほとんどどうにもならない」と思って差し支えない。
守備が下手と評判でプロ入りした選手がプロ入りして数年後に名手になったなんて聞いたこともないし、コントロールがアバウトな投手がやはりプロ入りして数年後に針の穴を通すコントロールになったなんてことも聞いたことがない。
もちろんね、プロに入って適切な指導を受けることで守備力やコントロールが変わることはありますよ。でもそれはせいぜいプロに入って1、2年目までの話で、それ以降は何年鍛えようが名手になったりコマンドが使えるほどの投手になるなんてあり得ない。何しろ先例をひとつも思いつかないレベルなんだから。

だからね、もしかしたら守備とかコンタクト能力とか投手のコントロールは<技術>ではないのかもしれない。いや<ない>は言い過ぎだけど、ある程度の天性の能力がないと後天的に得ることは無理なんじゃないか、と思うのです。
ただ、これらも「野球を知る」ことである程度はカバー出来る。守備だったらポジショニングだったり、打席でのコンタクト能力は「球種を読む」ことで<かさ上げ>は出来るのかもしれない。
でもそこに頼るのはどうなのよ?という話で、それはもう、これ以上技術の向上は見込めない、はたまた衰えや怪我の影響で技術が落ちてしまった時に用いる「最後の手段」なんじゃないか。

たぶん坂本が言いたいのはそういうことだと思う。
野球で一番大事なのは技術だと。しかし技術を得るためには最大限の努力が必要で、つまりいっぱい練習しないと技術が身につかない。となったらフィジカルは大事ではあるんだけど、それも結局は「技術を高めるための要素」なんじゃないか。
ま、さすがにね、足の速さと肩の強さは間違いなく「フィジカルがプレーにそのまま活かされる」ことではあるけど、それ以外は、まァある程度かもしれないけど後天的に伸ばすことが可能となったら、実はもっと内面が重視されてもいいように思う。

っても別に「いい奴」とかそういうんじゃなくてね、自分をしっかり持ってるけど他人の意見もしっかり受け入れる人間、というか。
一見相反するこのふたつは両方ないとダメで、とくに他人の意見に耳を貸さないというか、そういうタイプが一番扱いづらい。言ってもチームスポーツなんで。
後は「継続する力」かな。ま、この話は長くなるんでまた今度書くけど、つかさ、「他人の意見に耳を貸さない」かつ「継続する力がない」選手で大成した選手とかいるのかね?

誰のこと言ってるかわかるでしょ。そう、AI化されたあの男ですよ。いやあの男が今でもAIを信望してるかはわからないな。何しろ継続力のない男だから。



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