ワシ、お客さんが甲子園球場へ行ってくれいうたら、乗車拒否や。なんでやて?いくら負けてもぎょーさん客が入るやろ。だから、ちっともチームを強うしよ、優勝せなあかんいう気にならんからや。いっぺん甲子園にカンコ鳥が鳴いたらええんや。そしたら球団の偉いさんも真剣に考えるんやないか。ええ、ワシかて熱烈なタイガースファンでっせ


井上章一著「阪神タイガースの正体」からの孫引きですが、元は「週刊宝石」の1982年5月8日号の記事からの引用らしい。

阿部牧郎(作家)「100敗してもいい。徹匠的に負ければいいと思ってる。バラバラに解体すればその中から何かが出てくるって思うだけ。とにかくツギハギツギハギできて、その結果つくろうことができなくなったのが今年の阪神なんだから。」


こちらは「ダカーポ別冊 辛口プロ野球内幕読本」からの孫引きで元記事は1982年4月28日の日刊ゲンダイ、らしい。
何の偶然か、どちらも1982年からの記事ですが、念のため申し上げておけば、この当時の阪神はまだ、いわゆる暗黒時代ではない。順位で言えば3位から5位をウロチョロしてる、という「とりたててどうこういうチームではない」という感じですか。
もちろん今ならCS争いで一番キーになるんだけどさ。つか当時のことをよく憶えているからこそ、この頃の阪神が毎年CS争いしたら、と考えただけでもゾッとする。つか何かの間違いで日本シリーズなんかに出ちゃダメなチームというか、だからこそアタシはCS反対なのです。

話が逸れてしまいましたが、冒頭の方の名もなきタクシー運転手もだし阿部牧郎もなんだけど、なんかまるで一見<提言>っぽいことを言ってるように思ってしまいます。
しかし冷静になれば、どちらも結局は「ただの負け惜しみ」なんですよ。少なくとも強いチームというか上手くいってるチームのファンはこんなことは言わない。
つか「客が来なければチームは強くなるのか?」そして「100敗すればチームは強くなるのか?」と言うと、これがね、どうもそうは思えないんですよ。

まずひとつずつ整理していきますが、客が来なければ、と言いますが、それはイコール、チーム力強化のための資金が枯渇することを意味する。
アタシもたいがいプアおじだからよくわかるけど、ない袖は振れないのですよ。袖が振れないばっかりにみすみす儲かるチャンスを逃したりするわけで、本当に儲けようと思うなら知恵だけではどうしようもない。やはり最低限の資金がなければ入ってくるカネも入ってこなくなります。

もうひとつの「100敗すればいい」の方は、もうあきらかに間違いです。たとえば会社として考えた時、負債が1億なのと100億でどちらが立て直すのが困難か、どちらが立て直すのに時間がかかるかを考えたらいい。
つかね、負け越しの数を<借金>とはよく言ったもので、たしかにペナントレースが終了して、次のペナントレースが始まったらプラマイゼロになったように思う。しかし実際には借金は積み上がってる。いわば見えない借金とでもいうのか、この見えない借金を返済していくのは本当に大変なんです。

ということを前提にして。
今回の主題は中日ドラゴンズです。阪神じゃない。では何故阪神を凡例として出したかというと、昭和50年代の阪神と今の中日の状況が非常に似ているのですよ。
さっきも書いたように、この頃の阪神は暗黒時代ではなく「中位を狙う」くらいのチームだった。だから今の中日よりは戦力的には幾分マシだったのかもしれません。
ただきわめて似通ってるのが観客動員です。

1980年代前半の阪神は1964年を最後に20年近くリーグ優勝から遠ざかっていた。もはや「優勝出来ないタイガース」というのは当たり前になりつつあった頃だったと言ってもいい。
にもかかわらず観客動員は伸びる一方だった。1964年の優勝時点ではギリギリ100万人に到達した程度だったのが、毎年増え続け、ゆうに150万人を超えだしたのがこの頃だったのです
優勝もしないのに、どころか優勝争いにさえほとんど絡めないのに、観客が増え続ける謎のチーム、それが阪神だった。
それまで一般的な考えとして、チームが強ければ観客が増える、弱ければ減る、と単純に思われていたのが、強くなくても増えるという現象が起こったわけです。

それでも、さすがに「弱くても増える」ということは、いくら阪神でもなかった。事実、暗黒時代は観客動員が落ち込んだ。となったら「<強くない>くらいなら増える可能性はあるけど、さすがに<弱ければ>減る」ってのが常識だったと言ってもいい。実際、ここ数年の広島東洋カープは三連覇の頃からあきらかに戦力が弱体化しており、戦力と比例するように観客動員も落ちていってます。
ところが昨今の中日はこれを覆してしまった。弱くても、減らない、どころじゃない。増えている。これはもう、前代未聞です。

何しろこれは日本のプロ野球史上初めてのことなので、今後どうなっていくのかさっぱりわからない。
ただし、儲かってるのは事実だろうし、さすがにね、もっとしっかりカネをかけてやんないとマズいフェーズに入っていくとは思う。つかたしかにプロ野球では前代未聞だけど、一般企業と考えたら「儲けるだけで客に還元しない」というのは誰が考えてもマズい話で、プロ野球において客に還元=戦力強化です。

つかさ、中日ファン見てて思うのは、監督や選手叩いてる暇があったらもっと親会社っつーかフロントに怒れよ、と思う。これだけ儲かってるはずなのに一切還元する気がないのはどういうことだよ、と。
アタシからしたら、もう「搾取の典型」に思える。だって誰も怒ってないからいいじゃん、みたいな。つか何で山口一郎を内部に入れた。いや山口一郎が悪いってことじゃなくて、それって結局「営業面強化」でしょうが。今やんなきゃいけないのは営業じゃないよ。戦力をどうにかすることだよ。

たしかに当たり新外国人を獲るのは難しくなったし、FAでも市場に良い選手が出てこなくなってる。それはわかるけど、それでもです。中日が一番何とかしなきゃいけないのはフロント、もっと具体的に言えば編成でしょ。
アタシはテラスを付けたことはいいと思う。しかし時期が悪すぎる。なんか評論家でいまだに「中日は投手がいい」なんて言ってる連中がいるけど、はっきり言って今の中日の投手力はここ10年20年スパンで考えたら一番悪い。なんで一番投手力が悪いタイミングでテラス付けたのよ。いやマジで編成大丈夫か?

さっきも書いたようにアタシはプアおじです。でもだからこそわかる。カネを持ってる人はケチでカネを持ってるわけじゃない。つかただのケチではカネは貯まらない。
アタシが知ってる金持ち全員に共通して言えるのは、みな「カネの使い方が上手い」んです。んでビンボーな人は揃いも揃ってみんなカネの使い方が下手。節約しちゃいけないところで節約して、節約しなきゃいけないところで散財してる。

阪神も昔はそんなチームだった。しかし星野仙一が「カネの使い方」を伝授した。それでフロントが「カネを増やせるカネの使い方」を学んだんです。
星野仙一はもちろん中日出身です。だから少なくとも落合博満が監督の頃までは「使うところはケチケチせずに使う」というのが残っていた。必要とあらばマネーゲームにも参加していた。
でも今の中日は違う。本当にカネの使い方が下手になった。

マジで100敗しても何も残らないよ?再建に余計時間がかかるだけだよ?つまり無駄ガネを使うことになるんだよ?それでもいいの?



プロ野球 プロ野球2026年 1980年代 雑誌 勝ち負け 阿部牧郎 井上章一 阪神タイガースの正体 中日ドラゴンズ リーグ優勝 暗黒時代 観客動員 弱くても増える 広島東洋カープ サカナクション 山口一郎 テラス プアおじ カネの使い方 星野仙一 2026年 全1ページ