何度も言うようにアタシは捕手論争に参加するつもりはありません。というかこれも昔書いたけど、梅野隆太郎も坂本誠志郎もどちらも好きな選手なので、どっちが良いかなんて決める必要はないと思ってるし、そんなことはどうでもいい。
またアタシは所詮素人なのでリードの善し悪しもわからない。というのを大前提にして話を進めます。
そんな素人のアタシでもわかるのは、梅野と坂本はまるでタイプの違う捕手だということです。
まずは坂本のことから行きますが、坂本と言えば「インサイドワーク」と「フレーミング」です。もともと坂本は頭脳の優秀さには定評がありましたが、それに裏打ちされた配球の妙と優れたフレーミングで他11球団の打者をキリキリ舞いさせた。そしてWBC日本代表にまで上り詰めたのです。
しかしここに落とし穴があった。
坂本の優れたインサイドワークが発揮されるにはある程度の投手レベルが必要とされる。例えば村上頌樹のような空振りがとれるストレートと抜群のコントロールがあれば坂本の配球は威力を発揮する。
というかです。ちょっと考えてみてください。村上のようなレベルの高い投手の攻略するのは非常に難しい。となったらですよ、もしアタシが他球団のスタッフなら「村上攻略法」を考えるよりまず「坂本攻略法」を考える。坂本の配球を徹底的に解析して狙い球を絞らせる。そっちの方がどう考えても攻略の確率が上がります。
んで今年に入ってから突然、坂本がマスクを被った試合に限って1イニングに大量失点するケースが激増した。これは去年までなかったことです。
坂本のリードが読まれてる・・・
そう感じた阪神贔屓も多いでしょうし、読まれてるとしか言いようがない打たれ方も何度も見てきた。
つまり今までの坂本の配球が通用しなくなった、かはわからないし、そもそも今年は投手陣の状態があまり良くなく、ピッチャーが坂本の配球に応えられないケースもあったのも間違いない。
でもとにかく、結果としては、去年まであった坂本マジックが切れかけてる、そういうことが増えたのです。
では梅野は、です。
梅野にかんして言えば、もうだいぶ衰えた。「梅ちゃんバズーカ」と呼ばれた肩は見る影もなくなり、とくに去年なんか、まるでコーチみたいな顔でベンチに座ってる、という「もう選手として戦う気持ちが萎えたのかな」と思うほとでした。
それでも今年に入って梅野はかなり蘇生した。あきらかに身体の動きが良くなり、どうしようもなくなっていたバッティングもかなり戻ってきた。
とは言え肩は衰えたままだし、さすがに今さら坂本と勝負するのは、どころか髙橋遥人の扱いに抜群に長けた伏見寅威と比べても、という感じだったのもたしかです。
それでも梅野は己の生きる道を知っていた。
エントリタイトルに沿うなら、坂本が「配球の坂本」なら梅野は「リードの梅野」なのです。
配球とリードはゴッチャになりやすいし、ゴッチャに使ってる人もいるけどアタシは峻別している。
配球というのは文字通り「どの球種をどのコースに投げさせるか」です。坂本はこれに長けているのですが、先ほどから書いてるように長年正捕手をやってると読まれやすくなるという欠点があるし、また投手のレベルが要求されるので投手力が弱ってる時には威力を発揮しづらい。
ぶっちゃけ梅野は配球はそんな上手い方ではないと思う。でもその代わり「リード」は本当に上手い。リードとはこれもその名の通り、どの球を投げさせるか云々ではなく、とにかく投手を引っ張っていく。
これが如実に発揮されたのが木曜日の巨人戦です。
先発の伊原ははっきり言ってかなり調子が悪かった。とにかくストレートが走ってなかった。「これは5回もたないな」というふうに見えた。
1番の浦田から始まる3回裏の巨人の攻撃、ここで梅野がとんでもないことをやった。浦田が粘るのをお構いなしに、真っ直ぐを続けたのです。
もはやこんなの配球もなにもあったもんじゃない。変な話、打ち取りたければ変化球を投げさせた方がいいなんて素人でもわかる。でも梅野はひたすらストレートを続けた。
すると、あれだけキレがなかった伊原のストレートが、浦田が粘る毎にキレが出てきた。そして最後は見事に三振に切ってとった。
たしかに「球のキレが悪い投手にはなるべくストレートを多く使って、キレを取り戻させる」というのはありますし、打者が浦田という、東京ドームであっても早々ホームランの心配をしなくていい打者というのもあったとは思うのですが、それでもここまでストレートを続けるのはやはり尋常ではない。
つまり梅野は「イニングの先頭のこの打者(浦田)をどう抑えるか」はさほど重要視しておらず、それよりも「どうやって伊原の調子を取り戻させるか」にしか関心がなかったように思う。
伊原の調子が戻らなければ、仮に浦田を抑えたところで早い回でノックアウトされる確率が高い。ならば、ということでしょう。
さらに土曜日の試合では特技であるブロッキングで工藤の覚醒を引き出した。
1アウト満塁、セデーニョへの2球目は161キロのワンバウンド投球、しかも内角寄りに構えていたにもかかわらず外に逸れる球だったのに、これを反応だけでワンハンドキャッチした。これにより工藤はとんでもない安心感を得たと思う。とにかく腕を振っていこう。仮に逸れても梅野さんが抑えてくれる。そう感じたはずです。
そしてセデーニョの見事三振にとり、さらに次打者のサンタナの初球は球団日本人最速を更新する163キロを記録し、最後は高めの釣り球で三振に切ってとった
調子が上がらない投手、未覚醒の投手が増えた現今の阪神で、配球ではなくリードで投手を引っ張る梅野の存在感はきわめて大きい。そして投手のレベルや調子が上がっていくと今度は坂本のインサイドワークとフレーミングが光るようになる。
つまり今の阪神には梅野も坂本もどっちも欠かせない。さらに言えば左投手との相性抜群の伏見を含めて3人とも絶対に必要な人材です。
本当ね、誰に片寄るでもなく、上手く3人の「名捕手」を使い分けて欲しい。みんな役割が違う。そんなチーム他にないんだからさ、そこをストロングポイントだと意識して欲しいなと切に願うわけで。
