とにかく阪神ってチームはエースと呼ばれるピッチャーのいないチームで、アタシが野球を見始めて以降、もう本当に数えるほどしかいなかったりします。

アタシがプロ野球に興味をもったのが1976年ですが、他球団ははっきり、誰某がエース!と言える存在がいたのにたいし、阪神はというと前年に江夏豊を放出した影響で誰もいなかった。
もう消去法で、江夏豊との交換で阪神に来た江本孟紀か、遡ること3年前に22勝した上田二郎かって感じでした。
んでその3年後の1979年、いわゆる江川問題の絡みで小林繁が来た。んでこの年小林は22勝したわけで、ま、ここから3、4年は「エースは小林」だったと言っていいと思います。
しかし1983年オフに小林が電撃引退して、またエースがいなくなった。日本一になった1985年でさえエース不在で、重要な試合は池田親興かゲイルが任されていましたが、これもただの消去法です。

しかし以降、消去法エースすらいなくなった。
単年で見れば、キーオとか仲田幸司とか藪恵壹とかがいたけど、正直<消去法>と付いても物足りない。
そこに現れたのが井川慶だった。少なくとも井川はどこの球団のファンにたいしても「エースは井川」と言えるだけの成績を残してました。
ただし、なんか食い足りないというか、たしかに成績は立派だけどチームを背負って立つみたいな感じはまったくなかった。うーん、ま、そりゃ、エースは誰かって言われたら井川だけど、これでいいのかねぇ、と思ってたのも事実です。

アタシが唯一、文句なしにエースと認めていたのはランディ・メッセンジャー(以下、メッセ)です。
メッセについてはココにしっかり書いたので割愛するけど、メッセの姿を見て「これが求めてたエースという存在だ」と思っていました。
ただそうは言ってもメッセは外国人です。だからダメとかではぜんぜんないんだけど、何しろただの一度も贔屓チームに「文句なしの日本人エース」ってのを見てなかったので、やっぱりね、日本人でそういう投手が出てきて欲しいと渇望していたのです。

んでアタシが野球を見始めてから50年目、なんと半世紀ですよ、の今年、ついに文句なしの「大エース」と呼んでも違和感のない投手が出てきた。それが村上頌樹です。
たしかにここまでの成績で言えば、とにかく高橋遥人が凄まじすぎて、彼をエースと呼びたくなる気持ちはわかる。でもそれこそ2023年の村上も「WHIPが2リーグ分立後の歴代最高となる0.741」というとんでもない指標を叩き出してたけど、んでポストシーズンでもすべて初戦を任されて好投したけど、この時点では「エース」ではあってもまだ「大エース」ではなかった。

しかし交流戦の楽天戦を見て、ああもう、ついに村上は大エースになったんだな、と思った。
この日の村上は6回を投げて98球、5被安打1与四球の無失点。たしかに無失点は立派だけど、村上クラスになると「6回で降板した」「ちょっと球数が多い」というのは物足りない。つまり出来としては、まァ贔屓目で「普通」くらいだったと思う。
でもこの試合の6回にこそ、村上のさらなる成長が見えたのです、

話は前のイニング、5回裏に遡ります。
阪神は熊谷敬宥の見事な3盗とルーキ立石正広のタイムリーで先制点を奪った。そこまでは良かったのですが、問題は3番の森下翔太です。
ま、早い話が主審に暴言を吐いて退場になった。話が逸れるから簡単に書くけど、この森下の態度は言語道断です。つかこんな誰も得しないことやってちゃ本当にダメだよ。
とにかく、せっかく先制点をとったにもかかわらず、めちゃくちゃムードが悪くなった。そのムードの悪さを引き摺るように、5回までほぼ完璧だった村上は実に嫌なヒットを2本打たれてノーアウト1、2塁になったのです。

しつこく言ってるように、人間がやるスポーツの場合、流れはあるに決まってる。もうこれについても細かく書かないけど、これね、並みのエースなら1点は取られてたと思うんですよ。逆の言い方をすれば「エースだからこそ嫌な流れを食い止めて、何とか同点で踏み止まった」って感じかもしれない。
でも大エースは違う。ここで4番黒川を見逃し三振にとり、おそらく今の楽天で一番嫌なバッターの村林をゲッツーに打ち取ったのです。

さらに昨日、7月26日の試合です。
9回表、嫌なヒットを2本打たれてノーアウト1、2塁になった。ってここまでは楽天戦の6回と一緒。違うのは相手打者です。
巨人の4番であるダルベックは滅法阪神戦に強い。しかも前々日、9回ツーアウト、あと1球のシチュエーションから才木がダルベックに逆転2ランを打たれている。
たぶん阪神ファン全員が「嫌な感じ」がしたと思う。岡田彰布ふうに言えは「よぎったよ。よぎるよそら」ということになる。

にもかかわらず、村上は間違えなかった。当たり前のように低めに変化球を投げてゲッツーに打ちとったのです。
この「いざとなったら絶対に点をやらない」という姿はまさしくアタシが求めていた大エースの姿で、いやぁ、村上、本当に成長したなぁって。
でもですよ、他球団ファンから見て「村上は阪神の大エース」と思われてるかっていうと、そんな感じは微塵もない。

村上?なんかコントロールが良くて打たせてとるタイプだろ?なんかエースっぽくなくない?と思われているように思う。
しかし実際は2025年の奪三振王ですし、ここぞではきっちり三振を奪える。たしかに豪速球タイプではないけど、一切垂れないストレートでちゃんと空振りがとれる。
というかね、スピードガンでしか、いやもっと言えば数字でしかモノを見れない人間がいるんですよ。で、数字でわかりづらいことは全部<運>なんて言っちゃう。当然そういう輩から村上の評価は低い。

でもいいよそれで。もっと低評価しててくれ。
少なくともアタシは、50年野球を見続けて初めての「阪神の日本人大エース」って思ってるから。誰よりも頼りになるピッチャーだと思ってるからさ。



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