いやもちろん、スティーブ・ジョブスがどういう人間だったか<表層的>には知ってるつもりなんですが、それでもやはり、初代iMacの発表会は感動してしまうんですよ。
あの頃のAppleは「終わった会社」扱いだった。というかちょうどその頃アタシはDTPを始めた頃(会社から無理矢理覚えさせられていた頃)で、当時の常識からしてMacを使ってたんですよ。
でも、そんな遠くない未来にMacはなくなるのではないか、というような雰囲気がプンプンだった。
正直アタシは、さすがに「スティーブ・ジョブス」という名前は知ってたけど、実のところAppleに復帰した、どころかAppleを追い出されたということすら知らなかった。
これは時代が関係している。
1990年代後半、Macなんて使ってるのはDTPとかDTMとかやってるような「アタマのオカシイ」連中しかおらず、なんというか、パソコン、というよりは「機材」という感じだったので、「今よりはるか彼方に」一般人には何の関係もない話だったんです。
ですからMacが、というよりAppleが今どんな状況になってるのかという情報もあまり入ってきてない。でも「Appleが危ない」というのは薄々感じてはいた。しかしそれ以上、具体的にどう危ないのか、Macがなくなるのか、Appleという会社が消滅するのか、はたまたどこかの大企業に買収されて細々と生き残るのか、その程度の情報すら掴めていなかったのです。
そんな時、本当に感覚的には<突然>という感じでiMacが発表された。
iMacと言えばデザインばかりが取り沙汰されるし、アタシもiMacのデザインの先進性についてはココでガッツリ書きましたが、本当にすごいのはプライスです。
当時としてはほぼ最高グレードのPowerPC 750を搭載していながら日本での小売価格は178,000円。しかも、これは当時読んだ記事の記憶なのでかなりあやふやなのですが、仕入れ値は相当低かったらしく、小売店にとってはものすごく利益が大きい機種だったらしい。つまり売れば売るほど儲かる=店頭での扱いもどんどん良くなる、という。これは薄利多売が当たり前のPC市場では画期的だった。
ここからは推測になりますが、おそらくAppleは「儲け度外視」でiMacを出したんじゃないか。これは「Think different」という「製品どころか企業CMでさえない」、ただただAppleは変わります、という宣言だけのイカれたCMに大金をブッ込んだことを考えればあながち間違いではないと思う。
逆サヤ商品というのはコンシューマゲーム機でよくある手法ですが、Appleは「小売価格もだけど卸値を下げて、小売店に大々的に扱ってもらう」というアドバタイジングをも巻き込んだとんでもない逆サヤをやってのけた。
実際、プロダクトデザインの革新性と合わせてiMacは一大旋風を巻き起こした。以降、Apple製品は一部の「アタマのオカシイ」人だけが使う製品ではなくなった。そのおかげでV字回復を果たしたわけです。
・・・というのは当時から気づいていたわけではない。つかそんな鋭くないよアタシは。もし当時から気づいてたらもっとカネ儲けが上手いよ。
アタシが気づいたのは、ふと「Twentieth Anniversary Macintosh」という商品を思い出したからです。

たぶん「Twentieth Anniversary Macintosh」の実機を見たのは一度だけだったと思う。まだ福岡在住の頃ですが(たしかキャナルシティだったかな)、とにかくすでにiMacの販売後だったと思う。
正直な感想を言えば「なんだこれダッセー!」という感じだった。これはiMacとの比較ではない。数多のWindows機と比べてもダサかった。
どこかは書かないけど、どこかのサイトにジョブスがプレゼントされたTwentieth Anniversary Macintoshを窓から投げ捨てたという<伝説>に触れながら「カッコいいから嫉妬したんじゃないか」と書かれていましたが、いやいやいや、ジョブスがTwentieth Anniversary Macintoshをカッコいいと思うわけがない。つか嫉妬なんてするわけがない。
理由は簡単。あれはジョブスの思想と真逆の製品だから。
たしかにTwentieth Anniversary Macintoshは初代Macintoshをリスペクトしたようなデザインだけど、とにかく何もかも違う。あんなボコボコの表面で、色彩的な統一もなく、非常に高価なわりには液晶モニターのグレードにも妥協が見られ、性能自体も高いとは言えない。こんな人を馬鹿にしたような製品にジョブスが嫉妬するわけがないし、たぶん「こんなもんが何が20周年記念モデルだ。ここまで落ちぶれたのかAppleよ」と思ったに違いない。
変な話、Twentieth Anniversary Macintoshへの解答がiMacであり、広告のiMacのスクリーンに「hallo(again)」と表示させたのは「これまでの自分が関わってないMacは全部ナシ!ここから新しいMacの物語が始まります」という宣言だったと思う。
そう考えるならTwentieth Anniversary Macintoshは意味があったのかもしれない。あれがあったからこそジョブスが「自分ならこうする」という発想に至ったのかもしれないし。
にしても、やっぱよくわからないのが、Twentieth Anniversary Macintoshって<あの>天才プロダクトデザイナーのジョナサン・アイブがかかわってるんだよね。
なんでアイブが担当しながらあんなデザインになった。つかあれでないとGOが出ないほど当時のAppleの上層部が腐ってたのかねぇ・・・。
