例えば「七人の侍」でも唯一、三船敏郎演じる菊千代は完全に異分子として描かれているわけで、それが強烈な魅力となってるというね。
この「チームの中にひとり異分子がいる」というのはフィクションに限らずかなり重要なことでして、アタシが敬愛するクレージーキャッツでも植木等は異分子なんですよ。
他のメンバーが全員東京の生まれ(桜井センリはロンドンだけど)で、いわゆるお坊っちゃんなのに、ひとりだけ地方出身で、けして裕福とは言えないお寺の息子なんだから、もう家庭環境からしてまったく違う。
しかし都会っ子ではないことで逆に都会っ子ぶりを上手く咀嚼して、いわばモダニズムの戯画化に成功した。つまり一部の人にしか感じ取れないモダニズムではなく、誰でも理解出来るモダニズムを体現出来たと。
ではですよ、エントリタイトル通り、スパイダースの異分子は誰か、と言えば、アタシなら「井上順」と答える。
早くに引退したカッペちゃん(加藤充)はなかなかその片鱗はわからないのですが、他のメンバーは「なにこれもうオールスターじゃん」と言えるような才人しかいない。
マチャアキは言うに及ばず、かまやつひろし、大野克夫、井上孝之がどれほど日本の音楽業界に貢献してきたか言うまでもありませんし、田辺昭知は田辺昭知で何しろ田辺エージェンシーの総帥です。あの天才ヴォードビリアンにして意識は完全に素人だったタモリを完璧に活かしたんだから。
そんな中、まァ、こと<芸事>に限れば何も突出したところがなかったのが井上順だった。
そういや、手元に映像がないので確認出来ないんだけど「ザ・スパイダースのバリ島珍道中」の中で冒頭に田辺昭知が怪我をするんですよ。田辺昭知はドラムなので他のメンバーがドラムをやらなきゃいけないってことになるんだけど、田辺昭知が「順、頼むよ」と。
いやいやいや、たしかにこれはフィクションというか「スパイダースをモデルにしたスパイダース」でしかないんだけど、順に演奏は頼まないよ。つか順がドラムが(仮に代役レベルであっても)叩けたとは到底思えないし、そこは天才的器用さのあるマチャアキに頼むっしょ。
そもそもの話、順は歌も(いわゆる音痴ではないけど)極端に音域が狭く、順向けの歌を作るのは大変だったらしいし。
しかし井上順には圧倒的なアドバンテージがあった。そう、そのルックの良さです。
話は変わるようで変わりません。
アタシが行ってた大学は変な大学だったので、みんな当時のイケメンには興味かない。それよりも「井上順ってめちゃくちゃカッコ良くないか?」という話で持ち切りだった。
とくに順のファッションセンスは高く評価されていて、あんな何を着ても着こなしてしまう人もいない。
ちなみにもうこの頃の井上順はたいして露出がない頃で、スパイダース解散後なのはもちろん「カックラキン大放送」も終わってた。なのに、たまに出てきただけでも井上順のルックの良さは圧倒的だった。
でも井上順は本当にルック<だけ>の人だった。
以降もたまにドラマとかに出てもね、もうかなりの高齢になってもですよ、つまり「おじいさん」と言われてもおかしくない年齢になっても、別に演技に<味>が出てきたとかそういうこともなく、ただただ「なんかやけにカッコ良いおじいさん」なんですよ。
つかここまで、完全にルックの良さ一本で来た芸能人もいないんじゃないか。普通見た目なんてどんどん衰えるし、長年やってたら自然と<味>のようなものが出てきたりするもんですが、井上順に限ってはそうじゃない。こんな特殊な人はいないですよ。
冒頭に書いた三船敏郎や植木等は、言っても「チーム内では異分子」レベルなんですが、井上順はそれにとどまらず「芸能界全体を見渡しても」異分子なのがすごい。つまりある意味ミフネや植木等よりすごい。
何よりすごいのが、人気が落ちたと思わせるところがまったくない。つかスパイダース全盛期でも、あれだけのルックの良さがありながらマチャアキに比べると人気面では劣っていた。
つまりトップになることもなければ、落ちぶれることもない。常に安定して、ある意味孤高の存在として<そこ>にいるんです。
と考えたら、やはり井上順は芸能人として相当な才人だと思う。つまり「スパイダースのメンバーに相応しい」んですよ。
