てなわけで毎週月曜日は今年も野球ネタで行こうと思うのですが、まだ正月気分も抜け切ってないんでね、ちょっくら番外編的な感じでテイストの違うことを書いてみようと。
さて、昨年(2025年)のはじめ頃に「新しさと古さ」というエントリを書いたのですが、ま、リンク先の本文にあるように「似たようなことばかり書いてしまうので、それを回避するために書いた」わけで。
にもかかわらずまたしても似たようなことを書くみたいですが、どちらかと言うと類似事例というか、そういやあの頃も散々「新しい」に振り回されたなぁ、と。
とにかくです。1990年代前半、我が国にもついにサッカーのプロリーグが作られ、そして始まった。そのこと自体は非常に喜ばしく、アタシ自身サッカーに積極的興味はないものの何となく嬉しかった記憶があります。
しかしすぐに、こうした嬉しいという感情を持ったことを後悔することになります。
理由は簡単。マスコミによる「JリーグVSプロ野球」という構図の皮を被った苛烈なプロ野球叩きがはじまったからです。
今でこそテレビや雑誌などのメディアはオールドメディアなんて言われますが、当時は国民感情をリードする存在だったことは間違いなく、やがてプロリーグの枠を超えて「サッカー=若者が見るやる、オシャレ、カッコいい、新しい」、そして「野球=冴えない中年男性が見るやる、ダサい、古い」という図式があっという間に出来上がった。
阪神タイガース贔屓、そしてプロ野球贔屓のアタシはこうした世の中の空気に苦々しい感情を抱いた。
当時のアタシはまだ20代前半です。つまり文句なしの若者。でも野球が好きというだけで、サッカーにも野球にも興味のない連中(つまり何の実態もわかってない連中)から「オッサン臭い趣向」と見られた。
重要なのは1980年代まで、もっと正確に言えばJリーグが始まる1991年まで、そうした空気は微塵もなかった。んで、マジで感覚としては「ある日突然」プロ野球はオッサンの趣味、ダサい扱いに変わったのです。
こうした対立構図を煽動したのがどこかはわからない。しかしこれは失敗だったとつくづく思う。
この頃のプロ野球は当たり前のように毎日テレビで中継があり、視聴率もときに30%を超えていた。もちろん今より全体的な視聴率が高い時代ですが、とにかくそれだけ「普通以上にプロ野球にたいして興味を持つ人がそれだけいた時代」なんです。
つまりこの苛烈なプロ野球叩きは多くの日本国民に嫌な記憶を残した。Jリーグなんてもんが出来たがばっかりに突然プロ野球が目の敵になった、みたいな。
しかもタイミングが悪いことに、我が阪神タイガースはJリーグ発足年の1992年こそ最後まで優勝争いをしましたが、以降本格的な暗黒時代に入ってしまう。そしてこの頃巨人と並ぶ強豪になっていたのは野村克也率いるヤクルトで、あろうことかヤクルトのビジターユニはあきらかにサッカーのユニを意識したものだった。
プロ野球選手がバラエティに出てもヤクルトの選手が阪神の選手を莫迦にしまくって、阪神がオチに使われる。そうした屈辱を味わうことになった。
実際、こうした「プロ野球はダサいという<風潮>」そして「阪神はいくら莫迦にしても構わないという<風潮>」に辟易して、1990年代後半、アタシはそこまで熱心に試合を見なくなってしまったのです。
そしてここからが重要なのですが、じゃあ、プロ野球への関心が薄くなったアタシが、だったらJリーグを見ようとなったかというと、まったくなってない。
もしかしたら当時のプロ野球叩きは2000年代に入ってからの一時的なプロ野球離れの遠因にはなったのかもしれない。でも悪感情が残るJリーグなんか好きになるわけがない。アタシも別にサッカー自体は嫌いではないので、一時的延々ウイイレをやってたし、いろいろあってプレミアリーグのアーセナルの動向はずっと気になってる。結局移籍しちゃったけど冨安がいる間にエミレーツスタジアムに行きたいなぁとずっと思ってたくらいで。
1990年代前半の対立構図、そしてプロ野球叩きは結局Jリーグに何のメリットもなかった。いや後年への影響を考えるとデメリットのがはるかにデカかった。アタシのように「サッカーが嫌いじゃないプロ野球ファン」みたいな人間は<憎っくき>Jリーグなんか応援するくらいだったら海外リーグを見る。しかもそれはよく言われるレベル差の問題ではない。つか実際レベル差と興味を惹く惹かないとは関係ないからね。(レベル差抜きで楽しみ方があるというのは高校野球を楽しんでる野球ファンが一番よく知ってる)
そして令和の今になって思えば「古い」と言われたプロ野球の構造が如何に実態に則した、少なくとも日本においては正しいやり方で、「新しい」扱いされたJリーグが、正しい正しくないは置いといて決定的に日本とは合わないやり方だったのかがあきらかになった。
プロ野球とJリーグはチーム運営というよりはリーグとしての考えがかなり違う。正直プロ野球好きからすると「何でそんなところにこだわってるの?」みたいなことも多い。例えば
・スタジアムの厳格な規定
・入団、退団、移籍にかんしての自由度
・親会社名をチーム名に含めない(地名+ニックネーム、もしくはニックネーム+地名でなければならない)
どれも、何と言うか「理想論すぎる」と思ってしまいます。
ま、チーム名問題は話がとっ散らかるのでオミットしますが(他にも昇降格制度などもあるけどそれもオミット)、スタジアムの規定はかなりうるさく、天然芝でなければならない、観客席全体に屋根が付いてなければならない、など野球の球場でもそこまでやってるところはありません。ま、札幌ドームとエスコンフィールドは例外と言えるけど、あれは北海道という場所柄特別な仕様にしなきゃしょうがないからだけだし。
当然のことながらそうしたスタジアムは莫大な建設費がかかる。さらに維持費も異様に高くなる。しかもサッカーの場合試合数がプロ野球とは比べものにならないわけで、でも「天然芝の養生」の問題でまったく使われてない日の方が多い。
いやこれがエスコンフィールドのように親会社が全額負担して建設と維持をしていくのなら何の問題もない。でも実際は大半のクラブが各自治体にスタジアム建設をお願いしてるわけで(ほんの一部自前のスタジアムもあるけど)、そりゃ税リーグって言われるわ、と。
しかも例の花園ラグビー場乗っ取り問題とか、駅近でなければ嫌だとか、だったら親会社が全額負担しろよ、と。何をカネを出してもらう立場で文句ばっかり言ってるんだよ。
こんなのJリーグが方針を変えて「人工芝も可」、「屋根は一部だけでもいい」とかにすればいいのに、そこは絶対変えない。人工芝も可にすればスタジアムの稼働率が大幅に上がるし、屋根は建設費にはね返る。でも変えない。
プロ野球にもスタジアムにかんしてのルールはあるけど、ここまで厳格というか理想論的じゃない。ナイター設備がある、2万5千人以上収容出来る、くらいです。他にもあるけど少なくとも建設費や維持費にはね返るような規定はない。
もうひとつの入団、退団、移籍にたいしての自由度ですが、こちらはプロ野球のがはるかに厳格です。
入団にかんしてはドラフト会議を経なければプロ野球球団に所属出来ないし、選手の意思による移籍はフリーエージェントの権利を得なきゃいけない。んで退団も「任意引退」と「自由契約」に分かれている。
Jリーグはその点圧倒的に自由で、だからこそトッププレーヤーの海外移籍も容易に出来る。つまり選手にとってはかなりメリットが大きいのですがメリットばかりじゃない。
選手の移籍が自由な以上、契約金があまりもらえない。プロ野球の場合、契約金は年金の前払いとも言われてきましたが、Jリーグはそりゃトッププレーヤーになれたらいいけど、そうじゃなければ総収入はめちゃくちゃ低くなってしまう。
さらにクラブとして考えたら、チームは「今、その時だけのもの」でしかないので選手を推しづらい。せっかく有望な新人選手や移籍選手が入っても「どうせすぐに出ていく」となったらアピールしても無駄になってしまう。
サポーターも同じで、クラブのサポーターな以上、選手に思い入れを持ってしまうと移籍のたびに贔屓が変わることになってしまう。
毎年のように選手がごっそり入れ替わる、でもそのクラブのサポーターであり続けるというのはアタシのように長年プロ野球を見続けてきた人間にはきわめてハードルが高い。
つかもし「阪神タイガース」という球団名だけ同じで、毎年選手がごっそり入れ替わるなら、たぶんここまで一所懸命見てないですよ。せっかく若手が伸びてきても、どうせ来年は違うチームにいるんでしょ?となったら醒めないわけないと思うもん。
つまりプロ野球贔屓にとって、Jリーグは「同じような感覚で応援は出来ない」んです。
2023年までアタシは神戸に住んでいました。んで何のことかノエビアスタジアムのすぐ近所だった。コロナワクチンもここで打ったし。
ノエビアスタジアムは立派なスタジアムです。で、ノエビアスタジアムをホームにしているのがヴィッセル神戸です。でも近くに住んでてまるで<熱気>を感じなかったし、ここがヴィッセル神戸のホームタウンだってのもまったくない。つか街としてヴィッセル神戸を盛り上げようという機運なんかゼロでした。
2025年8月、神戸に帰省したついでに軽く、新しく出来た阪神の二軍球場であるSGLスタジアム尼崎に行ってきたのですが、二軍なのにぜんぜんこっちのが<運営>として盛り上げようというのを感じた。街ぐるみで阪神の二軍を応援しようというムードが出ていた。
何でこれがJリーグのクラブで出来ないのか。何でスタジアムの豪華さにこだわるのか、何でクラブと選手両方に思い入れを持てるようなシステム作りが出来ないのか。
そして何より、何でプロ野球を目の敵にして、Jリーグが上手くいかないのは全部プロ野球のせい、みたいにしたがるのか。
間違いなく言えるのは、どれだけプロ野球の悪口を言ってもJリーグのサポーターはもちろん浅いファンも増えませんよ。プロ野球は古い、Jリーグは新しい、そんなことをどれだけ声高に叫んで、よしんば「新しければ何でもいい」みたいなしょーもない人間がファンになっても、そんなのすぐに次に移るよ。つか「もっと新しい」Bリーグが出来たわけだし、でもBリーグは「新しければ何でもいい」みたいな浅いファンだけじゃなくて確実に根づき始めてる。
そもそも新しいことなんかどんどん出てくるんだから。そんな売り抜けみたいな商売したってダメでしょうが。
いや運営だけじゃない。なんかね、マスコミやサポーターがよってたかってJリーグを潰しにかかってるようにしか見えないんですよね。
